その人は刃をあっさりと花びらにする
私を傷つける
この手にある刃に
目を光らせ続けた十年を
絶え間なく伸びる
この手にある刃を
摘み続けた十年を
そっと受け止め
そっと包んで
ほんの たったのひとことで
その人は刃をあっさりと花びらにする
どんな色鮮やかなそれよりも
いちばんわたしらしい
ももいろの花びらが十枚
いま指先で踊っている
嬉しそうにキラキラと
なぜ人は
こんなにもあっさりと
深く優しいのだろう
なぜ空は
こんなにもあっさりと
深い優しさと引き合わせるのだろう
(2018/10/28 poetry Tomoko Shimoji)
・。・。・。・。・。・。・。・。・。
アトピーになってからの10年間、
私にとって爪は刃でした。
爪なんてなくなってしまえばいいと
何度思ったか知れません。
毎日のように爪が伸びていないか
目を光らせて切り続けました。
そんな私に
「ネガティブな意味ではあったけど、
ずっとずっと爪のことを気にかけて
見てあげていたんですね。」
と、優しく言ってくださった方との
ご縁を詩にしました。
毎日目を光らせながらも
その存在をないものにしたいと
自分の一部をあきらめていたことを
救ってくれた有難い出会いの詩です。